
古代エジプト

猫の起源と家畜化
猫の家畜化は約4000年前の古代エジプトに遡るとされています。
もともと野生のリビアヤマネコ(Felis silvestris lybica)がエジプトの農村に現れ、穀物を食べるネズミや害虫を捕まえたことがきっかけです。
エジプト人はこの役割を重視し、徐々に猫を飼い慣らすようになりました。

宗教と神聖視
エジプトでは猫は神聖な動物と見なされ、バステトという女神として崇拝されました。
バステトは家庭と女性の守護神であり、猫の頭を持つ姿で描かれることが多かったです。
バステト神殿が存在したブバスティス(現在のテル・バスタ)では、数多くの猫が飼われ、死後にミイラにされて埋葬されました。

猫の保護と法令
猫はエジプト全土で非常に重要視されていたため、彼らを傷つけることや殺すことは厳しく禁じられていました。
プトレマイオス朝の時代には、猫の輸出も禁じられましたが、それでも猫は地中海沿岸へと広まりました。
エジプト人が猫の死を深く悲しむ様子は、ヘロドトスの記述にも残されており、家族全員が眉を剃って喪に服すこともあったと伝えられています。
ヨーロッパ中世

猫の再評価と迷信
中世ヨーロッパにおいて、猫に対する評価は時代とともに変化しました。
初期の頃、特に修道院では、猫は穀物を守る存在として重宝されました。
しかし、キリスト教が広まるにつれて、猫はしばしば悪魔や魔女と関連付けられるようになりました。
特に黒猫は不吉の象徴とされ、多くの迷信の対象となりました。

黒死病と猫の復権
14世紀にヨーロッパを襲った黒死病(ペスト)は、猫に対する見方を再び変える出来事となりました。
ペストの原因がネズミによって広がることが明らかになると、ネズミを捕食する猫の重要性が再認識されました。
猫の数が増えることで、ネズミの数が減り、ペストの拡散を抑制する効果が期待されました。

猫と民間伝承
中世のヨーロッパでは、猫に関する多くの民間伝承が生まれました。
例えば、猫が人の命を盗むという迷信や、猫が魔女の使い魔であるという信仰が広まりました。
しかし同時に、猫が幸運をもたらす存在とされる地域もありました。
例えば、船乗りは猫を船に乗せることで安全な航海を祈ったり、農家は猫が豊作をもたらすと信じたりしました。
日本における猫の歴史

古代から平安時代
日本に猫が初めて登場したのは、奈良時代(710年 – 794年)とされています。中国や朝鮮半島から船で運ばれ、文献には天平8年(736年)に猫が輸入された記録があります。
猫は主に貴族や僧侶の間で飼われ、書物や穀物をネズミから守るための存在として重宝されました。
平安時代(794年 – 1185年)になると、猫は貴族の間で特に愛されるようになりました。
『枕草子』や『源氏物語』などの文学作品には、猫に関する記述が多く見られます。
例えば、『源氏物語』には、光源氏が猫を愛でる様子が描かれており、猫が貴族の生活に深く関わっていたことが伺えます。

鎌倉時代から江戸時代
鎌倉時代(1185年 – 1333年)には、猫が武士の間でも飼われるようになりました。
この時期、猫は依然としてネズミ退治の役割を果たしていましたが、同時にペットとしての価値も認識されるようになりました。
江戸時代(1603年 – 1868年)には、猫は庶民の間にも広まりました。
浮世絵や文学作品にも猫が登場し、庶民の生活に猫が溶け込んでいたことがわかります。有名な浮世絵師、歌川広重や葛飾北斎の作品にも猫が描かれています。
また、この時期には「猫絵巻」と呼ばれる絵巻物が作られ、猫の愛らしい姿や行動が詳細に描かれました。

明治時代以降
明治時代(1868年 – 1912年)になると、西洋文化の影響を受け、猫の飼育方法や品種改良が進みました。
この時期には、海外から新しい猫種が導入され、日本の猫文化にさらなる多様性が加わりました。
20世紀に入ると、猫は完全に家庭の一員として定着し、多くの家庭で飼われるようになりました。
現代では、猫はペットとしての人気が非常に高く、多くの人々が猫と共に暮らしています。
猫カフェの登場や、猫をテーマにしたメディアコンテンツも増え、猫ブームが広がっています。

猫に関する文化と信仰
日本では、猫に関する多くの文化や信仰が存在します。代表的なものとして「招き猫」があります。
招き猫は、片手を挙げて客を招く姿をした置物で、商売繁盛や家内安全を祈るシンボルとして広く知られています。
また、猫にまつわる言い伝えや迷信も多くあります。例えば、「猫が顔を洗うと雨が降る」という言い伝えや、「黒猫が前を横切ると不吉」という迷信があります。
しかし一方で、黒猫が幸運をもたらすと信じられている地域もあります。

猫と日本の文学
日本の文学作品には、猫が頻繁に登場します。古典文学から現代文学まで、猫は多くの作家によって描かれてきました。
夏目漱石の『吾輩は猫である』は、その代表的な例です。この作品では、猫の視点から人間社会が風刺的に描かれています。
最後に
日本における猫の歴史は、長い年月を経て進化し、さまざまな文化や信仰と結びついています。
古代から現代に至るまで、猫は人々の生活や心に深く根付いており、その愛らしい姿は今も多くの人々に癒しと喜びをもたらしています。
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